本間志功先生が第57回日本臨床分子形態学会で論文賞を受賞しました!


この度、当講座(病院病理部所属)の本間志功先生が、第57回日本臨床分子形態学会で見事論文賞を受賞しました。おめでとうございます!
受賞論文は「Medical Molecular Morphology」に投稿した”Morphological and etiological analyses of C3 and non-C3 glomerulonephritis in primary membranoproliferative glomerulonephritis using periodic acid-methenamine silver stain electron microscopy: a retrospective multicentered study “(10.1007/s00795-023-00370-z)となります。以下、本間医師による解説を掲載します。

本論文は,現在 (形態ではなく) 病因別に分類される膜性増殖性糸球体腎炎 (membranoproliferative glomerulonephritis, 以下MPGN) に関して一次性MPGNの形態分類と,一次性MPGNの形態をとる代表的疾患であるC3腎症との関係を考察しています。

具体的には,一次性MPGNの症例を透過電顕とPAM電顕を用いて厳密に形態分類を行い,さらに免疫染色の結果からC3腎症の診断基準を満たすものと満たさないものを分けました.その結果,①一次性MPGN (特に1型と3型Anders/Strife亜型) の過半数がC3腎症の診断基準を満たさないこと,⓶一次性MPGNはC3腎症の診断基準を満たすか満たさないかに関わらず,電顕的に特徴的な性状の沈着物 (境界不明瞭でもやもやとした沈着物) がみられることがわかりました.

2012年New England Journal of Medicineに,MPGNは補体関連の糸球体腎炎 (C3腎症≒一次性MPGN) と免疫複合体性 (immune complex mediated) の糸球体腎炎 (すなわち感染関連,膠原病,パラプロテイン血症関連の糸球体腎炎≒二次性MPGN) に二分できるという総説がありましたが (Sethi et al. N Engl J Med. 2012),「C3腎症の基準を満たさない一次性MPGNがあり,その電顕像はC3腎症の診断基準を満たすMPGNと同様である」という今回の結果は上記の説に一石を投ずるものです.実際に,2020年Kidney International誌の総説では,「C3腎症の診断基準を満たさないMPGNも他の二次性腎炎の原因を検索した後に,補体機能異常の検索を考慮すべき」としています (Fakhouri et al. Kidney Int. 2020).今日MPGNは (免疫染色を用いた) 病因別の分類が主流であり,臨床的に重要であることは間違いないものの,電顕を含む形態観察の重要性を訴えた論文となります.

受賞時の模様

責任著者の城 謙輔先生と(左:本間医師、右:城客員教授)


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